12月19日、シンガーソングライターのれんが、東京・ヒューリックホール東京にて【れん X’mas Acoustic LIVE 2025 @ヒューリックホール東京】を行った。“圧倒的ホーム”感に包まれていた同公演の様子をレポートする。

　真っ暗なホールの中、ピアノとチェロが音を優しく奏で始め、「Promise」でライブがスタート。れんはシックな黒の衣装に身を包み、優しく歌い出す。美しくも芯がある歌声が一気に広がったところで、アコースティックギターを手に取り、続けて「一縷」へ。しかし、「もう1回やっていいですか？」と演奏をストップ。「ホームですからね。これができるのが強いね、ワンマンライブ」と笑顔を見せる。気を取り直して再び演奏を始め、「All of me's for you」へとつなげていった。

　ここで改めて挨拶。この日は“アコースティックライブ”。観客たちも座席に座ったまま、じっくり歌声と演奏に耳を傾けている。その様子を見たれんは、「全員座ってるのおもしろいな！　新鮮だね」と話す。さらに「立つ曲ないので…え、立ちたい？」、「1回立とうか」と観客たちを立ち上がらせ、そのまま「通り雨」へ。客席からクラップが起こると、れんも嬉しそうな表情をしながら歌っていった。大きな拍手と歓声を受け、「でも、」、「最低」と続く。ダイナミクスをつけて楽曲に表情をつけたり、美しい高音を聴かせたり、引き込まれるような低音を鳴らしたり。抜群に魅力的な歌声を響かせていった。

　ハイチェアに腰を下ろし、客席を見渡して「楽しんでもらってますか？」と問いかけるれん。「今日はイヤモニをせずに（モニタースピーカーの）返しのみでやっているから、直接皆さんの空気感を感じながら歌えるんですわ。表情も空気感も全部見れちゃう」、「この空気感がすごく楽しいです。」と笑顔で話していった。

　ここからカバー曲コーナーへ。まずは稲垣潤一の「クリスマスキャロルの頃には」。原曲の良さはそのままに自分らしく歌い上げており、まるで彼のオリジナル曲のように聴こえてくる。続いてはback numberの「クリスマスソング」。ステージ上の電飾がクリスマスツリーのように緑と赤に変わると、会場からは「おぉ～！」、「きれい！」と声が上がる。そんな声を受けて優しくも力強く歌い上げると、ステージが真っ白な照明に包まれる。それを合図に始まったのは、レミオロメンの「粉雪」。まるで雪景色の中で歌っているように見えてくる。そして、米津玄師と宇多田ヒカルの「JANE DOE」へ。新旧の名曲たちを歌い上げるれんの歌声に、会場は聴き入っていた。

　ライブも後半戦。ここで「今年メジャーデビューさせてもらえることになって。ありがとう。みんなのおかげだよ」、「ライブをやったら皆さんこうやって来てくれるわけじゃないですか。それって当たり前じゃない。僕が喉を潰して音楽ができなくなってしまうかもしれないことと同じように、皆さんの日常に残っているれんって貴重だなって思っています。熱って冷めるじゃないですか。でも今日という時間を僕にくださってありがとうございます」と改めて感謝を伝えていった。ここで、スペシャルゲストであるキッズダンスチーム・ヨハイセンを呼び込み、ほんわかした空気から一変、「盾愛」へ。ステージの中央で歌うれんの後ろで、ヨハイセンがアクロバットやJAZZダンスで楽曲の世界観を際立たせていくというスペシャルなステージを披露していった。「最近ツアーとかでセトリから外れてしまっている、僕が初めて作詞作曲をした曲を届けたいなと思います」という言葉で始まったのは、「嫌いになれない」。冬の星空のような照明の中、一音一音丁寧に歌っているのが印象的だ。ラストは「泡沫雪」で、本編に幕を下ろした。

　アンコールで再びステージに登場すると、和やかにグッズ紹介とプレゼント抽選会を行うれん。ファンと盛り上がったところで、「新曲聞いてもらえましたか？　今回は原曲じゃなくて、アコースティックバージョンで」と、「Last Parade」へ。さらに「みんなラスト2曲、立ってもらっていいですか？」と再び観客を立ち上がらせると、「一切合切」が飛び出す。クラップをしたり、手を左右に振ったりしている客席を見ながら、れんも笑顔で歌っていく。最後は「淡色の幸せ」。クラップもより大きくなり、楽しげな雰囲気でライブに幕を下ろした。

　「過去一ホームなワンマンライブ」と自身でも語っていたように、終始温かな雰囲気に包まれていた同公演。リラックスしていたからこそ、唯一無二の歌声が際立っていた。そんなことを思わされるライブであった。

Text by 高橋梓
Photo by Takashi Konuma

◎公演情報
【れん X’mas Acoustic LIVE 2025 @ヒューリックホール東京】
2025年12月19日（金）東京・ヒューリックホール東京